崖 より/沼谷香澄
 
夜明け前から降る雨に冷やされて知らず固化するわたしであるよ

いえぬちにいるとき雨は沁みてくる。知ってる、外に出ればいいのだ

見上げれば雨がざーざー降っている 染みひとつないしろうい天井

アメリカセンダングサの固化、いや木化した日向(ヒナタ)、微風(ソヨカゼ)、がまんできない

パンパスか?薄か?パンパスか?薄か?あたま一杯埋めてよ、白よ

隣家から薔薇のラティスに這い込んだ凌霄花(ノウゼンカヅラ) 咲けば許そう

蔓(かづら)つるくさ悲鳴を毟る(毒虫と紛う根を出す凌霄花)

セイタカアワダチソウが視界を包み込む(いのちだ)崖を滑って降りる

細胞が全部貴方を向いていたそういうときはいい子ができる

ええと、でも、今じりじりと音立てる鉄塔を見て、ほら、また、あれが、


初出: Tongue2号 2013年11月15日 原文縦書

   グループ"個人誌「Tongue」収録作"
   Point(3)