『 風 車 』/ハァモニィベル
 
靴を一足ください。そしたら、
 「この私がきっと旦那様を、幸せにしてあげます」

 *
猫は長靴をはいた途端、
 「誰しもはじめは、・・・」と、何やら言い始め、
 「はっきり言わしてもらえば、・・・・
 「〈芸術的〉という、あやふやな装飾の観念を捨てたらよい。」 などと、
 本棚から抜いた太宰の『芸術ぎらい』を開き、一節を朗読シタリし始め

 *

シャワーを浴びていると、浴室の戸の前に来て
 《芸術的雰囲気などといういい加減なものに目を細めているから、ろくなものが出来ない》
と、タテに細めた猫目で、ガラスをガリガリやって、
風呂に入れろ、と要求シ

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