エスカリエの沈黙・試論/ハァモニィベル
そして、
午後もさっそく
《今のところ この林檎だけが 彼の朝飯だが》
という
(誰か)の一節から、読み始めたのです。
古い探偵小説論の冒頭を読んだときなど、
さっきの林檎の匂いが
かすかに ほんのり してきます。
ラテン語で書かれたすべての哲学書がいつでも イヴの犯した罪
なしには 書きはじめられなかったように、ドイツ語のあらゆる
哲学書も 歴史の末にあるという 最後の審判なしには その本
を書き終ることができない。
哲学の本はいつでもこの 古い林檎の臭いがしている。
(中井正一 「文学のメカニズム」より)
林檎を齧りながら
本を読んで いたのでした。
そうです。そう、でした。
ジャズの中に 切れ切れにされたチャイコフスキーがあるように( 同 )
「ジョーは、林檎をかじりながら本を読んでいました。」(若草物語)
。
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