Like a Poetic Tree (2016.10.16)/もっぷ
わたしから巣立つかのように飛んでゆく異国が母国の風詠む一羽
地平線までは追えるが海は未だ見たことがない 無事でお帰り
真夜中の満月を背負う白鳥の飛来にわたしの枝は震えて
この道は打っ遣る場ではないのだが目印のように動けぬわたし
捨て案山子おまえもここに忘れ去られ朽ちてゆく様その一部始終
訛りつつわたしを桜と呼ぶ声のまた一つ上野始発に乗って
思い出の数だけ別れのあるとして別れの数だけ思い出はなし
渡りから土産をもらう風を呼びひろげてみると潮(うしお)の香り
春落ち葉さざれの上にかぶさるとふわしゃふわしゃとおさなごの靴
季節ごと買って粧うつまりひとは翼の対価を円で得ている
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