【Paradox Japan】(パラドックス・ジャパン)/るるりら
かつて 大本営のあった場所は晴天なり
銀のフォークの並ぶ部屋から見下ろせば
ゆっくりと雲は 流れる
ナイルの川ほどではないにしろ ゆたかな水が輝いて
四方形の掘の水が かつて権威のあった場所を清めている
熱線と血の匂いに焼き尽くされた場所を
おぼえているのか同席の彼女は九十歳をまじかにしていても
童女のように ころころと笑っている
膝に自分の骨を粉にしたものを材料にしたものを埋め込んだのだという
毎週プールに通い 毎日五キロは歩く九十歳の童女の澄んだ声
かつてこの地に血達磨の人々が 犇めいていたことも 忘れてはいないはず
眼下には浪々と 大河
スフィクス
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