挽歌/……とある蛙
崩壊してしまった言葉を
担当医師が帰ってくるまでに
そっと呟く
つぶやく
封筒の言葉は散乱し、頭の中を錯乱し
ハンマーで打ち壊すでもなく
事実と言葉をたたきつけられた自分は
担当医にそれを修復してくれ」
と倒壊した言葉を差し出す。差し出す。
それから彼女は脳腫瘍で死ぬのだ
まるで目を閉じる部分が壊れた
西洋人形のような
無表情で
顎も落ち口が開いたまま
無表情で
葬送の手続きは機械的に進んでゆく
列車のダイヤのように決まり切った時間を食って
私とあなたが夢に見た結末とはほど遠い天井
あれから一月半の梅雨空
夢見た空とは程遠い鈍色の曇天
あなたの上
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