弟と驟雨と鯉/りゅうのあくび
が降る日には
家に帰っても
ずっとカープの唄を
引き締まった声で
歌い続けていた
夢中になって真剣に
空を仰いでいた
弟は大きく息を吸って
そして吐き出していた
虚空に流れた
小さな涙の跡は
もはや乾いていた
*
今
彼はその仕事を
やめている
同じ飯を食べて
一緒に過ごした
東京からは離れて
広島の田舎に帰り
祖父と祖母の介護をしながら
農業の勉強をしている
綺麗な水の湧く大地で
新しい恋と云う
一輪の花を植えるために
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