各駅停車は台風のなかで/りゅうのあくび
夜を徹して
降りしきる雨
月曜日に朝を迎える
街で真先に開く
パン屋もすでに
忙しく
ラッシュアワーに
台風が直撃する
大きな白い傘を差しながら
駅へと向かう
運行規制で少しずつしか
列車は進まない
吊り輪を握りながら
いつのまにか
少年の頃に
台風の眼のなかにあった
記憶に隠された夜空に
僕はそっと掴まっている
何処か田園風景の匂いが漂った
秋の薫りに
海の匂いも混じる
ふと風はやみ
雨もやんでいる
紺碧色をした静寂に
包まれる
透明で澄みきった
夜空にはいつもより
ずっと星が瞬いている
各駅停車は
やっと
終着駅に到着する
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