仕掛け時計のある風景/りゅうのあくび
 
ホワイトノイズは
部屋で夏空を包みながら
白壁に掛かる孤独な
仕掛け時計の秒針が
いつのまにか
こつぜんと沈黙している
とても古い悠久にある
哲学をゆっくりと紡ぐ
みたいにして

時計がもはや
停まろうとしていた          
儚いほどとても短い
一瞬のあいだには
小さな物語がある

まるで恋人の
眼差しを映す瞬間を
想い出すように
仕掛け時計の秒針が
差す刹那には
恋しい人とかわした
約束がある

ちょうど
静寂のなかにあって
世界を点検しはじめる頃には
何もかもが
インクで転記された
数字が揺らいでいて
色彩のある記号のように
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