現場のへその緒(5)/Giton
 
かったとしても、木の間越しでは、ちらっと見える程度でしょう‥

ところが【下書稿(推敲前)】では:

「たったいま心の影の中を行ったのは
 立派な人馬の徽章だ
 騎手はわかくて顔を熱らせ
 馬は汗をかいて黒びかりしてゐた。」

と、まるで間近かに見ているような描写です。
ちなみに、推敲過程で、「心の」は、まっさきに削除されています。

ほんとうに見たのかどうか、あやしい‥w

考えてみると、たんに放牧されている馬が走る、というようなことではなくて、競走馬が騎手を乗せて走るのですから、ふつうの原っぱではありません。整地していなければ、馬はつまづいて怪我するし、人は放り出さ
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   グループ"宮沢賢治詩の分析と鑑賞"
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