笛吹き少年の行くえ(7)/Giton
「塵のごと小鳥啼きすぎ」という最初の一行は〔A〕断片のまま残されています(この一行を、賢治は、草稿上で執拗に何度も書き直したあと、けっきょく、もととほぼ同じ形に戻しているのです)。この行は、「青きそらのひかりの下を」「青きそらのひかりに」という削除された青空の描写を容易に想起させます──そうした“深い青空”の情景を、黙示的に含んでいると言えます。そして、この青空の描写は、次の「下書稿(四)」への手入れで、じっさいに復活するのです。?「神楽」の轟き、および雲間からの太陽の登場という〔B〕由来の部分も、いったん〔A〕の少年遭難譚と抱き合わせられたことによって、内容に影響を受けていると言えます。災害で命を落とした少年の口碑と結びつくことによって、これらは怪異性をより深め、かつ、デフォルメされた暴力性を、いっそう露わにしているのです。。。
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