追憶のマーメイド/ゴースト(無月野青馬)
膜を破ればいい
膜を破って
ぐちゃぐちゃに破って
そして
その奥の光る珠を見付けて
見詰めて
撫でてみればいい
撫でてみればいい
撫でてみれば
限界も無知も
退廃も劇も
消えて
ちゃんと(やがて)
妙齢になれるから
二人して妙齢になれるから
そんなに相手を呪わなくていいから
飽きなくて済むから
脱がすんだよ
膜を破るんだよ
先達は皆
そうしてきたんだから
そうしてきたんだからと
マーマンは言って
けれども
その日
マーマンはただ眺め続けることしか出来なかった
マーメイドが独りきりで泡になり
天へ昇っていく光景を
ただただ眺めていることしか出来なかったのだ
グループ"水棲詩集"
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