「春への遺しもの2016」/もっぷ
この冬は椪柑知らずに過ぎ去って如月終わる春の雨音
季の絵の具ほどくあしたに約束の白い花描く春と名づける
春始発父さんと猫と私の分切符もとめて銀河も超えて
父さんのお骨どこかへ移されて便りないまままたすみれ咲く
干し草のベッドを想うふるさとを持たないわたしの修惑の暗喩
おかっぱを切らずに二年過ぎた日にいとおしくなるしっぽのように
ごめんねと三次元にて云いたくて云えずに君はいまだ二次元
ドラえもんかパトラッシュかの二択では決めかねるからシチューにしたい
A型で長女ですから切り出して旋毛の向きと数で逃げ切る
雨の日の考え事はうまくない春も深まりカルピスつくる
こみあげる激情の日の東京のビルのこの部屋いま離陸せよ
春の日のデュラレックスのグラスには何でも似合う懐かしき涼
静かなる今朝の雨音わが胸に届くすみれの便りのように
砂場から砂場を求めて旅をした二歳のこどもいま立ち止まる
雨が降るかつてを捨てて生きてても今朝も少女が手を振っている
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