夜更けの紙相撲・2014.2月/そらの珊瑚
生は
「今はそれでいいのです。でも五十歳になったとき、それに答えられるようにしてください」
という趣旨を話したという。
今よりだいぶ平均寿命が短かった時代、おそらくその頃の五十歳は今の八十歳くらいではないかと思う。
人生押し迫った頃、自分のことをどんな風に覚えていてもらいたいか、それはそれまでどんな風に生きたかということと無縁ではないだろう。
私の実家の前に石屋があった。そこのおじさんがいつも水飛沫の中、大きな音をさせて墓石を機械で磨いているのを見るのが好きだった。
石屋の作業所には扉はなく、あけっぴろげだった。
春は公園の桜が舞い降りる中、おじさんは石を磨く。
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