非力さと几帳面さと 勝目梓『恋情』/深水遊脚
くれるわけではない。そんな幾重にも屈折した内面が細かく描写され、人によっては気持ち悪いと思わせるくらいです。甘美な思い出のなかのセックス、愛人との情事がやはり話の中心かもしれませんが、私にとっては、とっくに愛情の醒めた妻とのセックスの描写が興味深かったです。嫌悪感を隠しておらず、何も美化していないのですが、行為を再現できる程度にはきちんと書かれています。作品外部からのイメージと結びつけることなく、この作品で構築した世界で起こる人の感情や性的な情動をきちんと描く仕方は、私が何かを書くうえでも参考になりそうです。 グループ"閉架図書"
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