緑の月/
石瀬琳々
草合歓の葉陰から
かすかにもえる月を見た
藍青の波間にひかるものは
あれは はるかな昔
指から落ちた曹長石のかけら
青みをおびた涙の石の粒
もしも
月の淵から水音がしても
蠍がとぐろをまいても
気をとめてはいけない
どこか遠くから
緑の精霊が草笛を吹く
草合歓の花も眠りかける
失くした曹長石は今も波の中
ただむせかえる緑にうずもれて
この夜を泳いでいる
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グループ"緑の詩集"
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