【音】塩時計には音がない---三篇のオムニバス/るるりら
 

寺の多い街で 信心深い人たちの住む地域だったのだ。 
宇宙を 黙読しつづけている塩となった人々
溶けつづけた路
空すら 白く霞み
山も谷も川すらも 白い粒子でできた止まった街

塩時計の中では
放埓な命たちの記憶の塩漬けが そのまま粒子となり 
砂時計の砂は いまも 蓄積されてゆく

【塩回廊】 


海辺にある空港は 霧のため 飛行機は いつも旋回した後に着陸した
丁度 死体に純白なシーツを覆うように
逝く手を はばんでいたものは 放埓な塩の手招き

住んでいた家が壊されて 引っ越しをよぎなくされた女の子が
亀を生き埋めにして
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   グループ"「詩人サークル 群青」るるりら"
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