絵描きの鳥/kawa
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なにやら描かなければ仕方のない心持ちになった私は
一度持ち替えた筆を役立たぬ位置に留めながら
果たしてこの視界の全てが真っ白の雪原をどう描いたものか、と戸惑ってしまった。
それから、急にむかむかと腹を立てた。
何故私は絵など描かねばならぬのだ。
私は絵など嫌いなのだ。
今日においては、絵などすでに役目を終えた幽霊のようなものではないか。
私を、そのようなものに取り入れるな。
生きている私を、幽霊にするな。
そう腹を立てた。
すると男は私の筆をとり、黒の絵の具で、一筆がきに鳥を描いた。そうして
ああ、自由だよ
といった。
私は、男の水色の瞳に雪片が落ち、それが眼球の上でゆっくりと鳥の形に溶け残ったのをみて
ああ、この男は死んで鳥になったのだ、と理解した。
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