【 ガードレールの花束 】/泡沫恋歌
 
ガードレールの内側に
くくりつけられた花束
それに向って手を合わせる
初老の女性がいた

先日、その場所で
交通事故があったことを
私は知っている

バイクとワゴン車の衝突で
事故の瞬間は見なかったが
救急車がきて パトカーがきて
現場は騒然としていた

大破したバイクを
道路から移動させたら
大量の血とその側に
白いヘルメットが転がっていた

あれだけの事故だから
バイクの人は助からないだろう
と、思いながら……
私は自転車で通り過ぎたのだ

ガードレールの花束が枯れる頃
また新しい花が供えられる
御仏になった人を供養するのは
その母親かもしれない

我が子を亡くした姿は
悲しそうで見るのが辛かった
ご冥福を祈りながら
その場所をそっと通り過ぎる


   
                            2015/05/29


   グループ"「詩人サークル 群青」"
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