鏡の中の猫/……とある蛙
 

飼っていた黒猫が突然行方不明
家の玄関の鍵は掛けていた
どこか窓が開いていたのか
窓から見える風景は
空っ風舞う冬景色
街路樹の葉はあらかた落ちてしまい
魚の骨の並木道

ふと見る
鏡台の中に彼女はいた
いつものことかと鏡を覗き込む
鏡の向こうの部屋の隅
ちょこっと座り 前脚揃え
それからこちらへ ニャーと鳴く
よしっと後ろを振り返る
ところがそこに彼女はいない

またまた、鏡を覗き込む
今度はタンスの上の彼女がいる
いつもどおりタンスの上から
こちらを見ながら ごろんと倒れながら、
縁に首をすり付けて
また、こちらを見つめてニュンと鳴く
さぁっと
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