■批評祭参加作品■夭折をあきらめて夜が明けてゆく/岡部淳太郎
 
物のように得てしまった「生」というわけのわからないもの。それはやはり「捨てるに忍び」ないものだろう。かつての伝説の夭折詩人のこんな詩を読みながら、彼等だってもっと生きていたかったのかもしれないと、僕は思い始めていた。
 二十一世紀は、相変らず個人の生に対して無関心な顔で、ただ無言で今日という日をひたすら更新させている。僕はといえば、詩を読み、詩を書き、日々の仕事に取り組み、若い頃と同じように何かに憧れ、それを得られないことに傷つきながら、日常を何とか生きのびている。魅惑的な詩を読んでいると、時間を忘れてしまう。僕は詩を読み詩を書きながら大人になった。いつの間にか、大人になった。もう惑うことの許されない年齢が、もうすぐやって来る。夭折をあきらめ、詩の中に深く浸っているうちに、夜が更け、夜が明けた。僕はもう、夭折のことを思わない。ただ詩のことを、これから先の日々のことだけを思う。生きつづけなければならない。



(二〇〇七年一月)
   グループ"3月26日"
   Point(13)