詩人の罪/岡部淳太郎
ても僕とは相容れない考えだ。確かに詩を言語芸術として考えるならば、身近な者の死をテーマにすることは危険な行為である。詩がどうしても感情に押し流されてしまうからだ。だが、最大限の努力を払って感情を制御し、詩という表現のうちに踏みとどまろうとすれば、こうした問題は回避し得る。個からマスへ。個人の体験を万人に納得し得るものとして普遍化すれば良いのだ。もっとも、それは大変困難なことではあるのだが。
僕はまたしても罪という考えに立ち止まる。やっぱりこんな文章を書くべきではなかったのかもしれない。だが、僕はこの文章を書き、発表する。そのことによって、妹の魂が少しでも安らかになれるようにと願いながら。
こうして、僕はまたひとつ罪を重ねる。
(二〇〇五年三月)
前 次 グループ"3月26日"
編 削 Point(40)