睡眠/はるな
気付いた。そしてそれを動かした。あらゆるものが重く、それはそうだ、わたしのからだも、同じように重たかったのだ。わたしは彼女への憎しみを持余したまま鋏を握った。そしてそれから彼女の長くて美しい髪の毛を切りはじめた。からだがうまく動かなかったので、ゆっくりと。静かに、黒い波が、渦巻き始めた。わたしは眠ることができるだろうと思った。二枚の刃がこすれて、彼女の髪を切り落としていく音だけが部屋に響いていった。音として。わたしは眠ることができるだろう。
前 次 グループ"手帳"
編 削 Point(1)