永訣の朝に思いを馳せる/士狼(銀)
 
僕がチャーくんに出会った頃は
魚が飛んでいました
鳥が泳いでいました
月が溺れていました
太陽は寝ていました
僕の世界は笑うことを知りました


初詣に行く前に
チャーくんを思い出した白痴の弟は
何度も扉を引っ掻き
くぅ、と一度泣きました
魚の羽音のような、儚い声でした

御神木に爪を立てた弟を
怖くないよとあやしながら
お願い事は自分のこと
わざとらしく深々と頭を下げ
神様に媚を売りました
喋れない弟が何を願うのか
僕にはまるで分からなかったので
願いました
この子が長生きしますように

窓の外を見
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