銀色のスーツを身に纏った男が浜辺でギターの
死体を検分している。場違いなセンチメントが、
五十六種類ほど波間に明滅しているが、男は勿論
意に介さない。鉄の壁。クラプトンの遅い指。許
しているのは子ども。太陽が光度を増してゆく。
私が知りたいのは猫の行方なの。ほそい電話線
を通過してゆく尾、爪、瞳、ニャアニャア。やれ
やれ、そんなのは女の言い分だ。獺はそうぼやく
と、マイルド・セブンに火をつける。一九九八年
の夏のことだ。洗剤が切れていた気がする台所。
祖父が死んだ。生きるの
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