/とけた猫
コバルト色の階段をとけた猫がつたっていく、春、うつむくこと
は似合わない、踊る石と、まだ眠りから覚めない風を抱いている、
きみには。
※
/芋
芋を煮ている
女の背中はほのかに
紅色の蒸気をはっしている
説明して欲しいのは、きっと
わたしだけだ わたしだけでいい
※
/おさなさのあまり
幼さのあまり 潮騒をしらない
どこかに開いた大きな穴が 塞がるどころか
海をゆるすほど ひろがっていくのを
しらない おさなさのあまり
※
/ビー玉
わたしは
あいしているという言葉よりは
ひとつぶのビー玉のほうが好きだ