しあわせ/草野春心
すこし寒い朝と
すこし寒い夜と
あなたはそれでいいと
あなたは言うのでした
かなしみはどこにもないと
よろこびの逆はきっと
いつか色あせてしまった
もうひとつのよろこびなのだと
けれども僕は思うのです
おなかがすいただけで
ごはんを炊こうと思うだけで
募りゆく気持ちの塩辛さを
あなたはきっと知らない
すこし寒い夕暮れ
僕は名前をさがして
僕はあなたをさがして
そっと胸に手を置いて……
あなたは言うのでした
しあわせはここにあると
みずからをだきしめるように
あなたは言うのでした
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