金魚/草野春心
 


  きみの
  左の胸に
  腕を差しこみ
  ゆっくり引きだすと
  手のひらで
  金魚がぴちゃぴちゃ跳ねていた



  鉢も
  水もないので
  戻そうとしたけれど
  きみの左の胸は
  閉ざされ
  金魚はまもなく死んでしまった


   グループ"短詩集"
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