あわれな比喩/草野春心
 


  そこの膝掛けの上に置かれている
  一匹の沢蟹なのだが、
  数日前にある男が用いた
  あわれな比喩の成れの果てだ
  今となってはその詳細は思い出せない
  それに彼は十中八九気が狂っていたから
  早晩何かしらの方法で自死すると思う



   グループ"短詩集"
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