ノスタルジア/草野春心
八月の市営プールが君のノスタルジア。
脚立みたいな正体不明の監視装置に鎮座する五十格好、
主婦を悩ます排水溝のぬめりに近似したプールサイド、
二十五メートルを往復している小型の人口ピラミッド、
何を為しているのか自分でもわかっていない不思議感、
ひとつのこらず君の、ノスタルジア。
太陽の裏側にひらく
あじさいの花のなかで、
つつましく五、六匹の
蝸牛が午睡を貪り、
君の父親がウィスキーを
吐いては飲み、
本当と嘘をひっくり返して遊んでいる。
擦り剥いたひざに
バンドエ
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