都市風景(1〜20)/草野春心
 
魂と時の無間廊下で
  すでに
  音もたてず

  10.

  半ば即興の欲望で
  半ば即興の生に甘んじ
  半ば即興の麦茶を飲みながら
  半ば即興の尊厳死を遂げる

  11.

  濡れそぼった三叉路の
  ひとつのうえに猫の死体がころがり
  もうひとつに犬の死体がころがる
  最後のひとつには自分自身がころがり
  それは生きているか死んでいるかわからない

  12.

  昨日、
  隅田川を
  死んだ祈りが流れて行った

  13.

  ひょっとしたら
  駅のあの階段だけが
  いつまでもいつまでも生き延びる

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