月の嗤うさき 序/……とある蛙
 
後ろに付けたまま脅えながら唸る。彼の眼にも猿は尋常なものとして映っていない。
眼を凝らしてみると猿は異常に大きな類人猿と呼ぶにふさわしい体躯だ。
窓から霧と月明かりも滑り込み
大きな体躯の類人猿の輪郭を滲ませる

彼は突然私を見つめこう呟いた
イザナギ
っと

空には青い月
突然地上は濃い霧に覆われ
イザナギは語りかける
不思議な不思議な創世記を
創世記の物語を
音声の無い静寂の中
耳に聞こえるのは黒猫の唸り声
私の頭の中に落ち着いた意識が聞こえる。
不思議な創世記の物語
霧の中にぼんやりと浮かぶ森の風景に錯綜する。
   グループ"記紀"
   Point(4)