原風景2/日雇いくん◆hiyatQ6h0c
 
浮き立たせながら目を剥いてにらみつけ、本をまるで目の敵のように板に叩きつけているのを見ていると、気持ちのどこかから、生命力が細い管を通って少しずつ抜けていくように思えた。そんな空気が流れる現場を、原田もバカバカしく思っていたのだろう、
「残業なんて、やってられませんよ」
 なんて、よく言っていたものだった。しかしそんな事を思ったところで、急にそういう人たちがにこやかになるわけでもないから、半ばあきらめて仕事を続けるほかはなかった。

 結局深田は一ヵ月後に消えていった。
 最後の日には別れのあいさつもそこそこに、静かに、いつものように帰って行った。争いごとはいやだったのだろう。ゴネたりと
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