置物のこと/はるな
 
、小さな灰皿、弦の切れたギター、きちんとたたまれた古着たち。
だけど、彼のふるさとはそうではなかった。やっぱりあそこでわたしはよそものだった。
よそものというか、よそゆきというか。
わたしはそこで、並べられた縁起のよさそうな置物のようにいるしかなかった。
それは居心地の悪いものではなくて、がっかりするものでもなくて、うすうす予感していた疎外感だった。

あそこへ、なじむときは来るんだろうか。
いままでもそうだったみたいに、あそこを離れるときが来てやっと、自分が少しはなじんだことを感じるくらいだろうか。

玄関へそろえられたくつ。
家へ帰ってきたら、母が待っていた。労わるような表情で、お茶をつくりながら、どうだった?と聞く。
むかしのことはもうよくわからない。でも、わたしには帰る場所が用意されていたのだな、と思い知るのだった。


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