奪うのこと/はるな
。あげられるものであれば何でも。
でもひとつ例外は、わたし自身を欲されることだ。もちろんその場合にもわたしは幸福を感じるだろう。けれど幸福を感じながら途方もなくかなしくなってしまう。だって、だれも、そのひと自身を差し出すことなんて出来はしないのだ。
そのひと自身(というものがあるとして、)を手に入れることなんて、誰にもできない。それはいつも、ただ奪われるだけだ。気付いたときにはもうすでに奪われているものだ。逃げるひまも、抗うひまもなく。一瞬で。根こそぎ。奪おうとして奪えるものではない。自分でも気付かないうちに奪ってしまっているのだ。そうして、あとで、奪ってしまったことに気付く。奪うっていう
[次のページ]
前 次 グループ"日々のこと"
編 削 Point(3)