アマリリス、お行儀のよいバター、盲目のこと/はるな
網棚でかさかさにかわいてる最中に、わたしはむすめとホットケーキなんか食べてた。まるくて軽く焼かれたホットケーキの上にはお行儀よく四角いバターがのってて、運ばれてくるなりフォークでつきさしてバターだけを食べたむすめ。店を出て暗くなった街をみて「いつよるになったの?」「まだ朝がよかったよ」とべそをかいたむすめ。
言いたいことは言い終わって、時間がながれていく。朝や夜が、街じゅうに(ひとびとに)しみをつくったり、与えたり奪ったりしながら色色とかわっていくのにいちいち心を動かされているのがいちばんいい。
いちばんいいとおもうのに、心ばっかり動いて体からはがれていくから、どうどうめぐりしてしまう。
たとえば朝、わたしの目ははやくさめて、(街が起きるよりもわずかに早く)、ベランダでたばこを吸う一息のあいだに、季節はぐるぐるまわっている。うそみたいに。なんども思い知らされる、ここがかつていたどこでもないこと。
ひとりでいるのはとても危険だ。いろんなものをみてしまう。(そして盲目になる)。
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