やめた男/花形新次
目眩のするような暑さが
身体中の水分と思考能力を奪う頃
この街の葉の緑は
あのとき忘れてきた
大切なアルバムの1ページ目に
相応しかったと気付いた
みんなで語り合った
中野の喫茶店
クーラーの効かなさなんて
問題じゃなかった
ただ、永島慎二だけが
確かに思えたっけ
夏のブロードウエイに
雪が降る
旅立ちの日は
人影もまばらで
みんな不平不満を口にしていた
おまえは
冷たい鉄人28号を抱えた
犯人の画像を見ながら呟いた
「鉄の巨人も信ずるに足りない」
Oよ
やめてしまったOよ
おまえのまんだらけは
まだはじまったばかりなのか
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