港の絵日記/……とある蛙
夏の始まり
山へ向かって
坂を駆け上がり
坂の上の神社から
振りかえった僕の目の前には
静かな港の防波堤の内側
鏡のような水面が見え
防波堤の外側には大きな青い海が広がる
水平線に見え隠れする外洋船のキャビン
手を振っても見えるわけもないが
思わず手を振る僕らを
夏の太陽が抱きしめる
濃い影は境内の楠の巨木から漏れる
さらさらした日の光を受け
足下を揺れている。
港町の小さな景色を掌にとって
僕の夏休みが始まる。
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