『近づく鉄塔と廻る鳥たち』/岡崎師
 

「無風を狙って、あの鳥は飛び出した
 籠から、あの人の隙を狙って、青空
 へ飛んだ。傷付いた羽根で、ぼくは
 風を感じる事が出来る。とうめいな
 翼で、とうめいな空を、感じること
 ができる。ぼくは翼を何万回も振る」


「羽撃く度に街が白くなってとおのく。
 街が霞んでいき、透明になってゆく
 街は小さくなり、ぼくの声が消えて
 いく。ぼくはあの場所を目指す。白
 い光がひとひらずつおちてゆく。僕
 は尚も羽撃いて征ける。街とぼくと
 の距離が離れていくにつれ、ぼくは
 強くなっていける。ぼくはあの場所
 を目指す。近づく鉄塔と廻る鳥たち」



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