江國さんは、漢字とひらがなにも独特の選択眼を持っている。 何を漢字にするか。どの部分をひらがなにするか。同じ言葉でも、あるときは漢字になっている。あるときはひらがなになっている。 文章の中での、言葉の力の入れ方を決めるために、江國さんは漢字とひらがなを選ぶにちがいない。 この言葉ならば、必ず漢字。この言葉ならば、いつもひらがな。そういうふうに、自動的に書くのではなく、言葉ごとに立ち止まって、文章ごとにためつすがめつして、そして決めるにちがいない。 (『すいかの匂い』(新潮文庫)解説 川上弘美)