林檎の時代/結城 森士
昼間の学舎から見える
土の校庭に一人の少年が鉄棒に
跳んでは回って空中で止まった
入道雲の眩しく飛んで
彼は青い空に吸い込まれて消えた
壊れたラジオの蝉の鳴く
汗に滲む目が二重に響く
昼下がりの半袖のシャツが濡れて
黒板の鮮やかな白
隣の女の子の崩れた姿勢が
無気力にラジオの壊れた蝉
放課後の校庭に
強迫的に蜃気楼の迫る
視界に熱が揺らめいて
太陽のひまわり色が
赤い林檎の街に変わっていく
商店街の空は
最後の友達と
自転車を押して歩いた坂道
道端のひまわりが
太陽にキスをして
彼は遠く遠く小さくなって
闇の中に消えていった
さよなら
林檎の時代
前 グループ"行方不明にて"
編 削 Point(6)