批評祭参加作品■「散文的な夏」 岡部淳太郎 /たりぽん(大理 奔)
 
日差しではなく、それが焦がす存在の影だ。歩きながらその速度で追いかけていく作者と追い込まれていく影。陽炎がゆらめきアスファルトが溶け、夏がそこに存在する。それはとても「散文的」に。文型的に散文という視覚的な試みを意図しただけにとどまらないその密度に私は苦手な夏を感じる。真冬に読んでも暑苦しい。それほどまでに、夏は作者から発散されたと思う。
 作者は後半、夏から季節を移そうとするかのように歩みを緩める。立ち止まり、自らの中にある「汚れ」を見つめる。汚れとは何なのかを解析しても仕方のないことだろう。ずれていったもうひとつの夏それが「おまえ」。暑苦しすぎる夏を抜けて立ち止まったときに見上げた空はやっぱ
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   グループ"第3回批評祭参加作品"
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