批評祭参加作品■時が終る、詩が始まる/岡部淳太郎
る揺らぎが私の中で起こり、その当時つけていた日記に初めて詩のようなものを書き記した。いまとなってみればとても読めたものではないし、思い出すと恥ずかしくもなってくるが、当時の私にとってみれば、ふいに訪れた「揺らぎの時」をわけのわからぬまま何とか手なずけようとするせいいっぱいの試みだったのだろう。おそらくあの時に私の幼年時代は死に絶え、それと入れ替りに少年時代が産声を上げていたのだ。
それからいくつかの節目を体験してきたように思うが、いまここで書いている私にもっとも大きな影響を与えた「揺らぎの時」は、まぎれもなく二〇〇四年三月に起こった妹の死だった。最近ある小説を読んでいたら語り手の甥が死ぬ場面が
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