批評祭参加作品■吉野弘氏への手紙/服部 剛
 
よりに席をゆずった。
そそくさととしよりが坐った。 
礼も言わずにとしよりは次の駅で降りた。
娘は坐った。
別のとしよりが娘の前に
横あいから押されてきた。
娘はうつむいた。
しかし
又立って 
席を
そのとしよりにゆずった。
としよりは次の駅で礼を言って降りた。 
娘は坐った。 
二度あることは と言う通り 
別のとしよりが娘の前に 
押し出された。
可哀想に 
娘はうつむいて 
そして今度は席を立たなかった。
次の駅も
次の駅も 
下唇をキュッと噛んで 
身体をこわばらせて----。 
僕は電車を降りた。
固くなってうつむいて
娘はどこまで行っ
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   グループ"第3回批評祭参加作品"
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