批評祭遅刻作品■時を止める?「殯の森」と「ノスタルジア」における垂直のメタファー/渡邉建志
 
持って、あるショット、ここぞと言うショットを撮らねばならぬ。たとえ、見るものが、「この場面はいったい何を意味しているのか分からない」と思っても構わない。「何を意味しているか分からないけれど、とにかくこのショットには作家の並々ならぬ切実さがある」と思うならば。

時を止めるということ。切実なメタファー。

大江健三郎が「オペラをつくる」(岩波新書)で、映画と小説を比較してこんなことを述べている。

小説の場合、時計の針をいったん止めて、その瞬間での情景を説明をする事ができる。たとえば、馬車が走っているシーンでは、馬車には屋根が付いていて、屋根の上にはシェードみたいなものが縛りつけてあって
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  グループ"第3回批評祭参加作品"
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