ある美しい愛の固定観念について/「智恵子抄」をとにかく読む(1)/渡邉建志
。「さあ何といいませう――まあ言はば」がすごいです。考えた末になんと人の嫁入りを身売りだといって貶します。こんな話があるでしょうか。そしてこれが嫉妬でなくてなんでしょう。かれはでも嫉妬とは認めません。智恵子が結婚するということ自体を認めていないようなのです。つまり(もし仮に)智恵子が光太郎に嫁にくる場合でも、同じように彼は、身売りだと言えたのです。(たぶん、言えたのです。すごいことですね。それは後々の詩で)結婚についての貶しは続きます。
あなたはその身を売るんです
一人の世界から
万人の世界へ
そして男に負けて
無意味に負けて
ああ何といふ醜悪事でせう
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