面接(6)/虹村 凌
下を向いていた。右手は、俺のジャケットの袖を掴んだままである。傍を通り過ぎて行く人達が、色々な視線を投げかけていく。その程度の視線に絶えられない柔な精神はしていないが、さっきまでとは違う彼女の態度に、少しばかり動揺する。彼女は小さなため息をつくと、顔をあげて一言だけ
「歩くの、早いです」
と言った。
「ごめん!」
反射的に謝る。自分が、若干早歩きなのは知っていたが、ここにきてその注意を払うのを忘れていたのは、大きな失態である。足が長い訳じゃないのだが、いやむしろ短い方なのだが、どういう訳か歩くのが早い。男友達にも「早過ぎるよ。女の子に嫌われるぜ?」と言われていたのを思い出し、冷や汗をかい
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