(無題)/キキ
さみだれてゆく花びらのかたちをした石たちが
ころころとうまれたてのこどもの涙のようにながれていって
さんさんと光をはんしゃしてはわれわれのあけた穴をうめもどしてゆく
かいつぶりたちのおばねが風にゆれてさんざいめいている
うたえるうたやうたうべきうたがあることを
われわれにおしえてくれたひとが
もういない
波のさざなみのあいまにちろちろとちいさな魚たちがかくればしょをさがして
われわれのあしもとまでにげてくる
*
にげられるものやにげるべきものがあるのなら、
『われわれはさむいことがうえることがみいだされないことがこわい』と
千かいくりかえしひざまずいて敬虔にいのれ
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