02:両腕に/chick
仕事帰り、会社近くの喫茶店で待ち合わせをして彩夏の部屋に行った。
今俺が穿いているジャージは、持ち帰るのが面倒でずっと彩夏の部屋に置いておいたものだ。放置していたつもりだったのだがちゃんと洗濯されていたらしい。どことなくやわらかくていい匂いがする。そういう点で彩夏はいい女だと思う。
「何考えてんの」
そう言って腕の中に滑り込んでくる彩夏はすっかりすっぴんだ。いまさらそんなことを気にする間柄でもないが。
「何も」
彼女を腕の中に収めながら浮気相手のことを考えてた、なんて言って平然といられる女はまずいないと思う。俺が浮気をしているなんて夢にも思っていないだろう。
「彩夏って猫っぽい
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