小詩集「マルメロジャムをもう一瓶」/佐々宝砂
 
したちは待っていた

たとえば資本論を読むことと
あしたのジョーを読むことが等価に語られ
コカ・コーラの瓶に封じたトカゲと
丸めた新聞紙に沁みこませたガソリンが
何らかの関連性を持つかのように語られるならば

あたしも語ってよかったはずだ
母たちの目のまえにあった鍋と釜のことでなく
アンネナプキンを売り出したお嬢さまのことでなく
シンデレラでもアリスでもロリータでもウェンディでもない
いまここにあるあたしの
あたしの
何だったか
待っているかぎり
あたしはとてつもなく自由だったが
待っていることそれ自体罪だったかもしれない

あたしは翔びたかったわけではなかっ
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